携行性に優れたコンパクトなボディに、超高倍率と高性能をいかに凝縮していくか。高画質をどこまで実現できるか。その挑戦が、タムロンの高倍率ズームの原点です。 第一の命題 より短い最短距離に ズーム倍率を二ケタに(もう一つの流れ) 軽量、コンパクトに 時代はデジタルへ さらに高倍率へ、そしてVCの搭載 高倍率ズームの理想の姿 究極の高倍率ズーム、誕生

1992

Model 71D AF28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical 詳細

1996

Model 171D AF28-200mm F/3.8-5.6 LD Aspherical [IF] Super 詳細

1999

Model 185D AF28-300mm F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO 詳細

2000

Model 371D AF28-200mm F/3.8-5.6 LD Aspherical [IF] Super II MACRO 詳細

2001

Model A03 AF28-200mm Super Zoom F/3.8-5.6 Aspherical XR [IF] MACRO 詳細

2002

Model A06 AF28-300mm Ultra Zoom XR F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO 詳細

2004

Model A061 AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO 詳細

2005

Model A14 AF18-200mm F/3.5-6.3 XR DiII LD Aspherical [IF] MACRO 詳細

2006

Model A031 AF28-200mm F/3.8-5.6 XR Di Aspherical [IF] MACRO 詳細

2007

Model A18 AF18-250mm F/3.5-6.3 XR DiII LD Aspherical [IF] MACRO 詳細

Model A20 AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di VC LD Aspherical [IF] MACRO 詳細

2008

Model B003 AF18-270mm F/3.5-6.3 DiII VC LD Aspherical [IF] MACRO 詳細

2010

Model B008 AF18-270mm F/3.5-6.3 DiII VC PZD 詳細

2011

Model B011 18-200mm F/3.5-6.3 DiIII VC 詳細

2014

Model B016 16-300mm F/3.5-6.3 DiII VC PZD MACRO 詳細

Model A010 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD 詳細

Model C001 14-150mm F/3.5-5.8 DiIII 詳細

2015

Model B018 18-200mm F/3.5-6.3 DiII VC 詳細

2016

Model B008TS 18-270mm F/3.5-6.3 Di ll VC PZD 詳細

2015

Model B028 18-400mm F/3.5-6.3 DiII VC HLD 詳細

第一の命題

タムロンの高倍率ズームは1992年発売の「モデル71D」から始まった。焦点距離は28mmから200mm。ズーム倍率は当時の一眼レフ用レンズとして最大クラスの7.1倍を誇った。

開発が始まったのが、発売から3年近くさかのぼる1989年である。開発陣に与えられた命題は、携帯に便利なサイズにすること。当時、似たような焦点距離を持つ高倍率ズームがなかったわけではない。だがそれらは大きく重く、画質も思わしくなく、誰もが(特に初心者が)手軽に使える代物でなかった。そこで目標とするサイズをタバコの箱を一回転した大きさに設定し、方眼紙を切って円筒状にしたサイズサンプルをつくって開発がスタートした。

これまでにない「携帯に便利な高倍率ズーム」レンズゆえ、開発は困難を極め、開発関係者は深く頭を悩ませた。光学性能については満足のゆく水準のものが出来るまで、試作品が出来ると繰り返し解像試験を行った。そして、別事業であるビデオカメラ用高倍率ズームの設計・製造を通じてタムロンが長年培ってきたノウハウと、一枚で複数枚のレンズと同等の働きをする非球面レンズ(複合非球面)の量産化成功により、ついに一つの形が生み出された。

完成したモデル71Dはタムロン独自の工夫が随所に施されたレンズであった。非球面レンズは、レンズ枚数の削減と設計の自由度を増大するとともに収差補正をより効果的に行うように最適な位置にレイアウトされた。鏡筒の2段繰り出しを可能としたトリプルカムズーム機能や、複雑なメカをショックから守り、同時に軽量化に寄与するエンジニアリングプラスチックなども積極的に採用された。生産工程でも光軸がずれやすく精度にばらつきが生じやすかったが、そのチェックおよび調整方法なども工夫し、製品として完全なものが3年近くの歳月をかけてようやく出来上がったのである。

市場に投入されたモデル71Dは、最初に欧米から人気の火が付いた。その後日本でも人気が広がり、交換レンズの一大ムーブメントとなった。しかし、タムロンの開発陣はこの結果に満足していなかった。というのは、モデル71Dの「最短撮影距離」(最も近づいて撮影できる被写体までの距離)が2.1mもあったからだ。この最短撮影距離は、200mmの望遠レンズとして考えればそれほど不自然なものではなかったが、28mmまである広角域を含むズームレンズとしては、満足のゆくものではなかった。なぜならば、広角では被写体に近づいて撮ることで、広角らしい、遠近感の誇張された写真を撮ることができるからだ。まして、日常のあらゆることを撮影対象にしたい常用ズームとしては、問題の残るものだった。

左:方眼紙を円筒状にしたサイズサンプルと「71D」 右:71D専用アクセサリー A9FB

より短い最短撮影距離に

1996年「モデル171D」のリリースが開始された。モデル71Dとの大きな違いは最短撮影距離であった。モデル71D の「2.1m」に対して、焦点距離135mm使用時に限定されるものの一挙に「52cm」と短くなったのだ。フィルム上に写る被写体の最大の大きさを表す「最大撮影倍率」も 1:9.5 から 1:4.8 へとアップし、高倍率ズームの使い勝手がさらに向上した。

これを実現したのがフォーカス方式の見直しである。モデル71Dは撮影距離が近くなるに従い、前面の大きなレンズが前方に繰り出されるフロント・フォーカス式だったものを、モデル171Dでは鏡筒内の小さなレンズを動かしてフォーカシングを行う(どの撮影距離でも鏡筒の長さが変わらない)インターナル・フォーカス式へと改め、描写性能を劣化させずに寄れるようになったのである。このリニューアルは、多くのカメラ愛好家から諸手を挙げて歓迎された。しかし、焦点距離によって最短撮影距離が少なからず変動するこのモデルに、開発陣はまだ満足はしていなかった。

そして、2000年に登場した「モデル371D」こそ、タムロン開発陣の誰もが納得する近接撮影能力を持ち合わせる高倍率ズームレンズであった。最短撮影距離は「49cm」と、これまでよりもわずかに短くなった程度だったが、ズーム全域でこの撮影距離を可能としていたからだ。テレ端の200mmで撮影を行った場合、最大撮影倍率は 1:4 となり、マクロレンズに迫るほどのスペックを誇ることとなった。

ズーム倍率を二ケタに(もう一つの流れ)

話しは前後するが、タムロンの高倍率ズームの焦点距離は当初28~200mmの1種類であった。ところがさらに長い焦点距離を必要とするユーザーの希望に応えるため、テレ側を100mm伸ばした28~300mmの高倍率ズーム「モデル185D」が1999年登場する。これによりズーム倍率は10.7倍にとなった。サイズはモデル171Dなどよりも一回りほど大きくはなってしまったが、より望遠で撮影を楽しみたいユーザーに受け入れられていく。タムロンの高倍率ズームは、デジタル専用が登場する2005年まで、28~200mmと28~300mmの2本立てで展開されることになる。

軽量、コンパクトに

2001年、これまでになかった小型・軽量化を成し遂げた「モデルA03」が登場する。フィルターサイズもモデル171Dで72mmだったものが62mmとなる。これを実現したのがタムロンのXR技術だ。光学設計の常道からいくと、本来、前側の大きなレンズ群には諸収差を抑えるために低屈折率のガラス材を用いるが、敢えて屈折率の高いガラス材を前群に用い、収差は後側のレンズ群で取り去るという画期的な発想の光学設計であった。前群に屈折率の高いレンズを配し光学全長を短くすることで、鏡筒の大幅な小型化が可能となり、モデルA03が誕生したのであった。「どこにでも持っていって、何でも撮れる」という高倍率ズームの理想に、サイズの面から大きく前進したモデルだった。また、鏡筒の外観デザインも大幅に変わって、現在のデザインの流れに通じるラインが出てきている。XR技術は28~300mmシリーズにも展開され、翌2002年「モデルA06」が登場した。ちょうどその頃、一眼レフは歴史的な大変革の真っただ中に置かれていた。

時代はデジタルへ

世紀の変わる西暦2000年を前後して、それまで一部のプロやマニア向けであったデジタル一眼レフが低価格で販売されるようになった。パソコンやインクジェットプリンターなどのデジタルデバイスとの高い親和性を持ち、フィルム代や現像代を気にせずに済むことから、たちまち広く普及しはじめる。ただし、銀塩フィルムでの描写と異なり、レンズの収差やフレア・ゴーストの影響を過敏に写してしまう特性を持っていた。特に内面反射によるフレアの影響を受けやすく、フィルムの特性に合わせて設計されたコーティングでのままでは、フィルム以下の描写となってしまうこともあった。また、イメージセンサーへ当る光はなるべく光軸に近い角度から入射する方が良いとされる、いわゆるテレセントリック性もこれまで以上に重要視されることになる。

タムロンでは、デジタルの特性に最適化された光学設計とコーティングを施したレンズを「Diシリーズ」として発売することになる。高倍率ズームも当然Di化され、モデルA06をベースとした「モデルA061」が2004年に登場する。しかし普及が進んできたデジタル一眼レフカメラのイメージャーサイズは、フィルムより狭いAPS-Cサイズがほとんどであり、ワイド側28mmでの画角は43mm相当ということになり、標準~望遠側にシフトした使い勝手となってしまう。

このためタムロンでは、フルサイズ(36×24mm)よりも一回り小さいAPS-Cサイズ(23.1×15.4mm前後)のイメージセンサーを搭載するデジタル一眼レフ専用高倍率ズームの開発にも取りかかっていた。そして2005年に登場したのが初のデジタル専用高倍率ズーム「モデルA14」である。ちなみに、モデルA14も含めデジタル専用のレンズをタムロンでは「Di IIシリーズ」としている。モデルA14の焦点距離は18~200mm。これはフルサイズ判に換算すると27~300mm相当の画角となる。Di IIシリーズは、イメージサークルも当然APS-Cサイズに応じた大きさとなった。

2006年には28~200mmのモデルA03もデジタル対応の「モデルA031」(Diシリーズ)へとリニューアルされた。

さらに高倍率へ、そしてVCの搭載

モデル71Dの発売から15年を迎えた2007年、デジタル専用のDi II高倍率ズームがさらに倍率をアップ。焦点距離18~250mmの「モデルA18」が登場する。ズーム倍率は13.9倍にもなる。先代のモデルA14から鏡筒の大きさはほとんど変わらず、30gほどの重量増に留めたのは驚きといってよいだろう。

さらに、長年タムロンが開発を続けていた手ブレ補正機能VC(Vibration Compensation)を搭載する高倍率ズーム「モデルA20」もこの年登場する。標準ズームや望遠ズームでは、手ブレ補正機能の搭載があたり前になりつつある時期でもあった。モデルA20はフルサイズデジタル対応のDiシリーズレンズで、焦点距離は28~300mm。鏡筒は一回り大きく重量も増えたが、シャッタースピードに換算して約4段分の補正効果のある手ブレ補正が使えることは何にも代えがたいものであった。そして、タムロン独自のスリー・コイル・システムが生み出す、ファインダー内で貼り付いたように安定した像を見せる手ブレ補正の効きは、画期的なレンズ内手ブレ補正機構として、多くのユーザーを虜にした。

VCは、APS-Cサイズデジタル専用のDi II高倍率ズームにも時間を置かず搭載されることになる。2008年「モデルB003」が登場。VCを搭載し、焦点距離もモデルA18より望遠側がさらに伸びて18~270mmとなる。ズーム倍率は実に15倍にもなった。VCを登載するため、やはり鏡筒は大きく重くなったが、手ブレ補正の搭載で撮影は快適であった。

高倍率ズームの理想の姿

これまでタムロンの高倍率ズームには、AF駆動にDCモーターを採用していた。コスト・パフォーマンスに優れ、熟成された制御技術から作動レスポンスにも実用上の問題は概ね見られなかったが、時によっては駆動音が大きく感じられることもあった。そこでタムロンは、圧電素子(=ピエゾ)をAF駆動に用いる全く新しいアクチュエーター(モーター)を使った高倍率ズームの開発に着手する。この新モーターは、ピエゾ素子に電圧を加えると素子の形状が変化する特性を応用したもので、AF駆動の静粛性に大きく寄与するとともに、鏡筒内にコンパクトにまとめ込むことの可能なドライブユニットでもある。さらに手ブレ補正機能VCのコンパクト化にも取り組んだ。そして完成したのが、デジタル専用高倍率ズーム「モデル B008」である。

モデルB008は、定在波型超音波モーター「PZD(Piezo Drive)」の採用とより小型化されたVCにより、モデルA18のサイズに迫るコンパクトさを実現。エントリークラスのデジタル一眼レフとも相性のよい大きさとしている。定在波型超音波モーター「PZD」による快適なAF駆動は、レンズの存在を感じさせず、自然に撮影が行える高倍率ズームの理想の姿を実現している。

理想の姿を実現できたとはいえ、「高倍率ズームのパイオニア」としての挑戦は止まることはなかった。そして2010年を前後して急速に存在感を高めつつあったミラーレス一眼カメラの市場に対応して開発したのが、APS-Cサイズ相当のミラーレス一眼カメラ用の高倍率ズーム「モデルB011」である。コンパクトなミラーレス一眼カメラにフィットする小型軽量サイズとともに、良質な画質を実現。焦点距離は18-200mm、手ブレ補正機構「VC」を搭載し、日常のスナップや旅行でのワンシーン等、さまざまな場面で手ブレのないシャープな写真を軽快に手持ち撮影することができるレンズを送り出した。

究極の高倍率ズーム、誕生

写真表現の可能性を広げるために

2014年4月、高倍率ズームの理想の姿を実現したモデルB008の完成度をさらに高めた「モデルB016」が登場する。ズーム倍率は「約18.8倍」を実現。待望の広角側16mmを達成し、望遠側もモデルB008よりさらに伸びて300mm。最大撮影倍率1:2.9でマクロ機能が強化され、最短撮影距離は39cmとなった。また新硝材UXRや非球面レンズを最適に配置した最新の光学設計により、小型軽量化とシャープな画質が実現されている。鏡筒の外観デザインも一新され、ブランドリングにタングステンシルバーを採用するなど格調高い質感となる。これまでにない幅広い撮影領域と高画質・高性能・高品質を兼ね備え、「究極の高倍率ズーム」と呼ぶにふさわしいレンズである。

さらに時を経ずして、2014年6月にはフルサイズ一眼レフカメラ対応の「モデルA010」、マイクロフォーサーズ・ミラーレス一眼カメラ専用のモデル「モデルC001」を発売。2015年8月には、ベストセラーレンズ「モデルA14」の後継機種として、手ブレ補正機構「VC」を搭載し、より軽く使いやすくなった「モデルB018」が登場する。

そして2017年7月、高倍率ズームがさらなる進化を遂げ、「超望遠高倍率」という新たなジャンルを切り拓く「モデルB028」が誕生する。世界初*118-400mm (35mm判換算28-620mm相当)の焦点距離をカバーするAPS-Cサイズ相当デジタル一眼レフカメラ専用の超望遠高倍率ズームレンズである。ズーム倍率は「約22.2倍」、望遠側はモデルB016よりさらに100mm伸びて400mmを達成しながら、全長121.4mm、質量705g*2という軽量・コンパクト化を達成。22.2倍というズーム比のレンズ繰り出し量をスムーズに操作できるよう3段繰り出し式の鏡筒を開発し、ズーミング時の快適な動作性と安定性を確保している。また高精度のAF駆動を実現するため、タムロン独自開発の「HLD (High/Low torque-modulated Drive)」を採用。HLDは、省電力でありながら、駆動力に優れ、レンズ自体の小型化にも寄与している。そして手ブレ補正機構「VC」も「超望遠高倍率」の撮影に対応してチューンナップされている。さらに外観はSPレンズシリーズの柔らかな曲線構成とディティールを継承しつつ、機能性と操作性にこだわった完成度の高いデザインとなっている。

初代モデル71Dの発売から25年余り。タムロンの高倍率ズームは、写真表現の可能性を広げるために絶え間なく進化し、「高倍率ズームのパイオニア」たるにふさわしい挑戦的な製品を常にラインナップし続けている。

*1 デジタル一眼レフカメラ用交換レンズにおいて(2017年5月現在、当社調べ)。
*2 長さ、質量はニコン用の数値です。