撮ることで得られる発見がある
写真について考えたり、論じたりすることが私の仕事の大きな部分を占めています。そのため自分で"撮る"という行為は重要です。今回は、ベトナムのハノイに約1週間滞在することで、日常よりもじっくりと"撮る"ことに向き合いました。そして撮影に際して、自分のなかでルールを設けました。
ひとつは、高倍率ズーム18‐270mm(モデルB008)の性能を活かして画角の違いから生まれる効果を意識した写真を撮ること。もうひとつは、かつて写真家のウジェーヌ・アジェが19世紀末から20世紀初頭のパリの風景を写真に残したように、「商店のウィンドウや街角など同時代の庶民の暮しを対象として、失われつつある古きパリのイメージを撮影する」という彼の作風をなぞるかたちでハノイの風景を撮ること。さらに家族での旅なので、子どもを撮ることです。このように、ルールを設けることで、普段の自分とは違った視点で得られる情報があり、新しい発見を得られます。
 
デジタル時代だからこそ、発見が広がる
実際のモデルB008の使用感ですが、ひと言で表せば「とにかくガシガシ撮れる」。コンパクトで機動力は十分。広角を基本としたスナップでは、常に18mmにロックしておいて、ちょっと違った視点で撮りたい時にロックを外して、手動でズームする……そのアクションが簡単にできるので、偶然性を活かすことができました。望遠に関しては、「手ブレが心配」という昔からのイメージが完全に払拭されましたね。手ブレ補正機構「VC」搭載のおかげで、低照度で手ブレしがちな場所でもしっかりと撮れましたし、今のデジタルカメラは性能が良いので、高い感度設定でも高画質を維持できます。そう考えると、デジタルカメラの性能が上がってきた今だからこそ、望遠域までをカバーしている高倍率ズームのメリットが活きてきているように思います。
そもそも写真美学的には、単焦点レンズで撮影したほうが写真家の視点が統一されやすいとされていますが、場所や時間が限定された撮影環境ではモデルB008のような高倍率ズームを使ったほうが、表現の可能性が広がると思います。
「ロバート・キャパが高倍率ズームレンズを使っていたら、どんな写真を撮ったのか」。とても興味深いですよね。
写真を楽しむためのエントリーモデルとしても最適
モデルB008の18‐270mmという幅広い焦点距離を考えると、活躍するのはやはり旅先のような一期一会のシーンだと思います。時間をかけて、幾度も向き合えるモチーフなら単焦点レンズもいいですが、タイミングが限られたシーンでは、レンズを替えることなく、広角、標準、望遠と瞬時に切り替えて撮影できる高倍率ズームの強みを活かせます。
また、同じモチーフでも、焦点距離を変えて撮ることでフレーミングの勉強にもなるでしょうし、今回の自分のように、有名写真家の撮影手法を真似ることも楽しめます。そういった意味では、ベテランの方はもちろん、表現としての写真を始めようという方のエントリーモデルとしても最適ですね。

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タカザワ ケンジ
1968年、群馬県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。
写真評論のほか、写真家へのインタビュー、撮影現場のルポ、写真史をテーマにした講座など、写真についてのフィールドワークと執筆を行う。東京造形大学非常勤講師。
*2013年6月公開