タムロンのレンズテクノロジー

ASL(Aspherical:非球面)レンズ

非球面レンズは、一定の曲率をもつ通常の球面レンズの形状と異なり、曲率の異なる形状をもったレンズのことをいいます。歪曲収差や球面収差といった諸収差を球面レンズだけで補正しようとすると、複数種類の球面レンズを何枚も組み合わせる必要があります。非球面レンズは、レンズ面の曲率を変化させることで入射光の屈折をコントロールし、1枚で複数枚の球面レンズと同等の補正効果を発揮させることができます。非球面レンズは初代高倍率ズームである28-200mm F/3.8-5.6(Model 71D)の開発時から積極的に導入されており、非球面レンズを採用することで、諸収差を除去しつつレンズ構成枚数を減らすことに成功しました。

歪曲収差の補正(タル型)

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ASL(Aspherical:非球面)レンズ

非球面レンズの一種である複合非球面レンズは、基材となるガラスレンズに特殊樹脂をプレスして非球面形状を形成したものですが、かつては技術的な問題で量産化が難しいとされていました。Model 71Dの開発が始まった頃、タムロンはすでに複合非球面製造のノウハウを多く蓄積しており、他社に先駆けて量産化に成功していました。現在では、超精密加工技術で造った金型で、高温で軟化させたガラス材を形成するガラスモールド非球面レンズの技術も進化し、それぞれの特長を活かしたガラス素材を利用することで、レンズ構成の最適化を図っています。

球面収差の補正

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XR(Extra Refractive Index:高屈折率)ガラス・
UXR(Ultra-Extra Refractive Index:超高屈折率)ガラス

XRガラスは、通常の光学レンズより屈折率の高い硝材、UXRガラスはXRガラスよりさらに屈折率の高い硝材で、レンズ前群に配置することで光学全長を短く抑えることができます。通常のレンズ構成では、前群に屈折率の低い硝材を配置することで諸収差を抑える設計をしますが、タムロンの高倍率ズームでは、あえて前群に高屈折レンズを配置して後群で諸収差を補正するという画期的なレンズ構成にすることで、画質の向上を図ると共にレンズ全体のさらなる小型化に成功しました。実際に、初めてXRガラスを導入した28-200mm F/3.8-5.6 LD XR(Model A03)は、前モデルの28-200mm F/3.8-5.6 LD(Model 371D)に比べて長さ、重量、フィルター径の全てにおいて大幅な小型化に成功。最新型の28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)ではUXRガラスを採用することによって、さらなる小型化を実現しています。XR・UXRガラスは、高倍率ズームモデルにおけるコンパクト化、高画質化のキー・テクノロジーとなっているのです。

模式図

タムロンのレンズテクノロジー

LD(Low Dispersion:異常低分散)レンズ・
XLD(Extra Low Dispersion)レンズ

LDレンズは屈折に伴う光の分散性が非常に低い性質を利用して、色収差を効果的に除去・補正することができる特殊ガラス素材です。XLDレンズは、LDレンズよりもさらに低分散で、蛍石に近い特性をもっています。色滲みによって画像のシャープネスを悪化させる色収差の原因は、レンズで入射光が屈折する際にプリズムと同じ作用で起きる分散という現象(白色光が七色に分かれる分光現象)にあります。主に、焦点距離の長い望遠レンズでは軸上色収差と呼ばれる色収差が発生しやすく、焦点距離の短い広角レンズでは倍率色収差と呼ばれる色収差が発生しやすくなります。広角から望遠まで幅広い焦点距離を含む高倍率ズームの設計では、色収差を低減させるLDレンズの活用は画質の向上を図るうえで重要です。タムロンでは高倍率ズームの2代目となる28-200mm F/3.8-5.6 LD(Model 171D)からいち早くLDレンズを導入し、高コントラストでシャープな画質を実現してきています。

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AD(Anomalous Dispersion:異常部分分散)レンズ

LDレンズと同じく色収差の除去・低減に効果的な特殊ガラス素材です。可視光の中のある波長域の部分分散比(ある特定の分散性をもつ領域の割合)が異常に大きいことから、他の光学ガラスとの組み合わせで特定波長域の分散性をコントロールすることで色収差を低減することができます。

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BBAR(Broad Band Anti Reflection:広帯域反射防止)コーティング

レンズ表面での入射光の反射やゴースト・フレアを防ぎ、最良のカラーバランスを得るために開発した独自のマルチコーティングです。タムロンでは、広い波長域に対して反射防止効果を発揮するために、初期から多くのレンズにマルチコートのBBARコーティングを採用してきました。その後、フィルムの高画質化、カメラの高性能化に応じ、1990年代に新BBARコーティングへと進化。イメージセンサー自体の反射が原因で、よりゴースト・フレアにシビアなデジタルカメラに対応するために、長波長、短波長ともにより広い帯域の光線の透過率を向上させたコーティングへと進化しています。最新のBBARコーティングは、処理面数をより多くとり表面処理の精度を高めるなど、これまで以上に厳密な対策を施し新設計のレンズに採用されています。

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高精度多層カム

高精度多層カムは、コンパクトなレンズボディから鏡筒を2段で繰り出し、広角側から望遠側までのズーミングを確実に行うための機構です。ズーミングによって焦点距離を変化させると、外見上は2段階にまっすぐ伸びているように見えますが、鏡筒の内部では焦点距離の変化に連動して複雑に前後するレンズ群を、多層構造のカムが高い精度で制御しています。高精度多層カムは高倍率ズーム初期に独自技術で開発された機構ですが、高倍率ズームが世に認められ倍率の拡大を望む声が大きくなると、ズームの繰り出し量をさらに長くするために、カムの機構もさらに複雑な構造と精度を要求されるようになります。望遠側の焦点距離を300mmまで拡大した28-300mm F/3.5-6.3 LD(Model 185D)では、それまで3層構造だった「トリプル・カム・ズーム」を、4層構造の「クワッド・カム・ズーム」として発展させ、コンパクトなレンズボディでも長い鏡筒を納めることに成功しています。大変に複雑なメカニズムの中に、高倍率ズーム機構を内包しながら鏡筒を確実に保持する精巧さを併せもっており、剛性感の高いスムーズなズーミング操作を行うことができるのも特長。高倍率ズームのパイオニアであるタムロンが誇る高度なズーム制御機構です。

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インターナル・フォーカス方式

インターナル・フォーカス方式とは、フォーカシング用のレンズがレンズ構成全体の中間から後部にある方式のことをいいます。従来ズームレンズはレンズ前群を繰り出してピントを合わせる方式が一般的でしたが、この方式では最短撮影距離が長くなってしまうのが欠点でした。タムロンでは高倍率ズーム2代目となる28-200mm F/3.8-5.6 LD(Model 171D)に、最短撮影距離に有利なインターナル・フォーカス方式を採用するという画期的な手段によって、初代28-200mm F/3.8-5.6(Model 71D)で2.1mだった最短撮影距離を52cm(焦点距離135cm時)まで短縮することに成功。その後も改良はつづき2000年発売の28-200mm F/3.8-5.6 LD(Model 371D)ではズーム全域49cm、最新の16-300mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD MACRO(Model B016)ではズーム全域39cmを達成しています。インターナル・フォーカス方式は「インテグレイテッド・フォーカス・カム」という技術によって、前述の高精度多層カムと融合することではじめて、複雑なズーム機構をもった高倍率ズームに搭載することが可能となりました。最短撮影距離を短縮できるといった特長のほかにも、AFスピードの高速化やフォーカシングにともなう画質劣化の抑制にも効果的であるなど、高倍率ズームの画質向上になくてはならない技術のひとつになっています。

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VC:Vibration Compensation

手ブレによる画像の乱れを軽減するために開発された、タムロン独自の光学式手ブレ補正機構です。
3つのセラミックボール(あるいはスティールボール)を介して、3つの駆動コイルが補正光学系(VCレンズ)を電磁的に駆動する「3コイル方式」を採用。補正性能の安定性に優れ、摩擦抵抗の少ない滑らかな動きを可能としています。また、レンズごとにアルゴリズムを高度に最適化しており、補正効果は常に最大で発揮され、追従性がよく貼り付くように安定したファインダー像を得られます。

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VC:Vibration Compensation

28-300mm F/3.5-6.3 XR Di VC(Model A20)で初めて搭載されたVCは、補正光学系側に重量のあるマグネットを配置したムービングマグネット方式を採用していましたが、この方式では構造的にVCを小さくすることが難しく、結果的にボディサイズの大型化を避けることができませんでした。そこでマグネットとコイルの位置を逆転し、補正光学系側に軽量なコイルを配置するように改良したことで、大幅な小型・軽量化に成功。18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD(Model B008)にはこのムービングコイル方式のVCが採用され、15倍の高倍率ズームとして世界最小・最軽量を実現。高倍率ズームVCモデルのコンパクト化に大きく貢献しました。

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PZD(Piezo Drive):定在波型超音波モーター

タムロンが世界に先駆けてレンズ駆動への応用に成功した、コンパクトな機構を特徴とする超音波モーターの一種です。長方形のピエゾ(圧電セラミックス)素子に、高周波電圧を加えることで素子全体が伸縮と屈曲を繰り返し、くねるような振動(定在波運動)を発生。これによって素子先端に設置されている金属チップが楕円運動を起こし、接触するローターを回転させることでAFの駆動力となります。

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PZD(Piezo Drive):定在波型超音波モーター

PZDは前モデルにあたる18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC LD (Model B003)から容積比にして24%の小型化に成功した18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD(Model B008)に初搭載。従来の高倍率ズームに採用されていたDCモーターに比べて高速性と静音性に優れ、よりスムーズで快適なピント合わせを可能にしています。さらに最新型の16-300mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD MACRO(Model B016)28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)では、AF時にフォーカススイッチの切り替えなしでMFによるピントの微調整が可能なフルタイムマニュアルフォーカスも実現。高倍率ズームにおけるフォーカシングの利便性をますます高めています。

PZDの動作原理ムービー

HLD (High/Low torque-modulated Drive)

タムロン独自開発の「HLD」は、高精度・高トルクでありつつ小型・省電力を実現した、新しいモーターです。HLDの名称は「High/Low torque-modulated Drive」の頭文字を取ったもので、モーターのトルクを調整することで、低速から高速までAF駆動を高精度に制御できることを表しています。HLDは、DCモーターと同様に磁力を利用して回転力を得るモーターの一種ですが、磁界を発生させるコイルに流す電流を機械的ではなく、電気的に切り替える構造になっています。そのためDCモーターと比べ、回転が滑らかとなり、正確なピント合わせを可能としています。またモーターを小型化できるため、AFモジュールの設計の自由度が高まります。超望遠高倍率ズーム18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD (Model B028)に採用されています。

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ステッピングモーター

比較的小型レンズのAF駆動を、非常に高い精度で制御できるモーターです。1回の電気信号(パルス)に対して1ステップの回転運動を起こし、1度の動作でフォーカス用レンズを指定された位置まで静かに正確に移動させます。構造がシンプルなためレンズサイズの小型化に有効であること、動画撮影時にAFの駆動音がノイズとして録音されにくいことから、ミラーレスカメラ用の高倍率ズームである18-200mm F/3.5-6.3 Di III VC(Model B011)および14-150mm F/3.5-5.8 Di III VC(Model C001)に採用されています。

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DCモーター

磁石の吸引力と反発力を利用して回転子を動かす駆動原理で、AF駆動の用途に限らず日常生活で広く普及しているモーターです。駆動速度や静音性という面では、新開発のPZDやステッピングモーターにアドバンテージがありますが、回転の制御が容易なこと、AF駆動に必要なトルクを得やすいこと、コストパフォーマンスに優れることなど、実用的なメリットが多く実績もあるため、従来から多くの高倍率ズームに採用されてきました。

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