高倍率ズームの技術革新

より小さく、より高画質に、そしてリーズナブルに。妥協を許さない技術革新を続ける、高倍率ズームレンズ。

MODEL A010  焦点距離:40mm 露出:F/4.0  1/100秒  ISO200

高倍率ズームレンズとは、広角から望遠までの幅広い焦点距離を1本でカバーするズームレンズのことをいいます。レンズ交換をしなくても画角を瞬時に切り換えることができるため、シャッターチャンスに強く、携行性にも優れた大変便利なレンズです。
タムロンが初めて携行性にも優れた高倍率ズームの開発を構想したとき、目標とした大きさは「タバコの箱を一回転した」サイズでした。しかし、当時のレンズ設計の常識から考えれば非常に困難なこと。それでも開発陣は素材の選定から光学系や各部機構の設計まで全てを見直し、試行錯誤の末ついに1992年、タムロン初の高倍率ズーム28-200mm F/3.8-5.6(Model 71D)に結実します。
それから今に至るまで、小型・軽量化、高画質化、焦点距離の拡大、最短撮影距離の短縮、そしてリーズナブルな価格の実現などの命題に取り組むことで、タムロンは革新的な高倍率ズームを世に送り出してきました。

高画質のカギを握る特殊ガラス素材の活用

高倍率と画質の両立。光学設計上で大変困難なこの問題に、最初に活路を開いたのが複合非球面レンズの量産化成功でした。導入時にはまだ一部の特殊なレンズにしか使用されていなかった非球面レンズを積極的に使用することで、歪曲収差や球面収差などの諸収差を効果的に補正できるようになりました。非球面レンズでは補正できない色収差に対しても、LDレンズADレンズといった特殊ガラス素材をいち早く取り入れ、いずれの焦点距離でもシャープでクリアなヌケのよい描写を実現しています。また、高い屈折率をもつXRレンズをレンズ前群に配置することにより、光学系の大幅なコンパクト化に成功するなど、高倍率ズームならではの画期的なテクノロジーを生みだしています。

デジタルカメラに対応したさらなる画質向上

デジタルカメラが広く普及するようになると、高倍率ズームの光学設計にも大きな転機が訪れます。タムロンでは、フィルムカメラが主流であった時代から、レンズ表面での光の反射を防いでコントラストの高い画像が得られるよう、独自のBBARコーティングを採用してきました。しかし、デジタルカメラはイメージセンサー自体が原因となる内面反射から、ゴーストやフレアが発生しやすい傾向があるため、それまで以上の高度な反射防止対策が必要になります。これに対してタムロンのレンズラインナップは、BBARコーティングの透過率や光学設計をそれまで以上に進化させた、デジタル対応の高性能レンズ「Diシリーズ」へと生まれ変わっていくことになります。フィルム/デジタル兼用の「Diシリーズ」は、APS-Cサイズのデジタル一眼レフ専用の「Di IIシリーズ」、ミラーレスカメラ専用の「Di IIIシリーズ」へと発展し、ますます高性能化するデジタルカメラに対応して描写性能の向上を続けています。

繰り出された鏡筒をコンパクトに納める高精度な技術

望遠まで繰り出される長い鏡筒を、コンパクトなレンズボディに高い精度で収納するための技術が、タムロンの誇る高精度多層カムです。外見からは単にズーミングで鏡筒が伸縮しているだけのように見える高倍率ズームですが、内部では何層ものカムが、焦点距離の長大な変化に伴うレンズ群の複雑な動きを制御しています。高精度多層カムは、最短撮影距離の短縮、描写性能の向上を実現するインターナル・フォーカス方式とも高度に融合(インテグレイテッド・フォーカス・カム)しており、非常に複雑な精密構造でありながら、それを意識することなくスムーズで剛性感の高いズーム操作を実現しています。さらに超望遠域400mm(35mm判換算620mm相当)をカバーする超望遠高倍率ズームのModel B028においては、22.2倍というズーム比のレンズ繰り出し量をスムーズに操作できるよう、3段繰り出し式の鏡筒を新開発しました。従来よりもカムを多層に分割することで、スムーズかつ安定したズーミングを可能にしています。

快適な操作性を実現する独自の機構設計

幅広い焦点域を1本に納める高倍率ズームだからこそ、どんな条件でも快適な操作性が得られるよう、常に機能の向上を目指して開発を進めています。独自開発の手ブレ補正機構VCはアルゴリズムを最適化することで補正効果を高めながら、機械的な構造をシンプルにしてレンズの小型化に貢献しています。また、レンズの小型化に対応しつつ、高速で静音性の高いAF駆動を実現するために、世界に先駆けて定在派型超音波モーターを応用したPZDを新開発し、高精度で高トルクなHLD (High/Low torque-modulated Drive)を独自開発しています。従来から高倍率ズームに搭載され実績のあるDCモーターや、駆動音が少なく動画撮影に適したステッピングモーターとあわせて、レンズの特性に最適な駆動方式を選択しています。

金型から自社制作する一貫した品質管理

タムロンではレンズの主要部品を製造するための金型を一貫して自社で製作しており、なかでも特に高精度な金型は熟練した職人の手作業によって造り出されています。その結果、部品のひとつひとつが高い品質を備え、それらが徹底的な管理の下に組み上げられ、1本の高倍率ズームとして完成しています。
「より小さく、より高画質に、そしてリーズナブルに」という命題に取り組み、妥協を許さない技術革新を続けてきた高倍率ズームレンズは、タムロンが培ってきた独自技術の結晶なのです。