
―2010年11月1日でタムロンは創業60周年を迎え、その創業60 周年記念モデルとして、「SP70-300mm F/4-5.6 Di VC USD」(Model A005)と「18-270mm F/3.5-6.3 DiII VC PZD」(Model B008)の2製品を発売されましたが、この2 本のレンズを企画したねらいをお聞かせください。
佐藤 60周年記念モデルを作るにあたってなにを重視すべきか、社内でいろいろ話し合ったんですが、レンズ専業メーカーとして一番こだわりたかったのは“高画質”という点です。しかも、できるだけ多くのユーザーにリーズナブルな価格で提供するために、それなりに数が見込めるレンズということで、フルサイズ対応の70-300mm望遠ズームと、APS-C専用の18-270mm高倍率ズームの2本に絞り込みました。どちらもスペック的には、すでに弊社のラインアップに存在するレンズです。70-300mmズームは、従来のモデルはどちらかといえば汎用タイプの望遠ズームでコストパフォーマンスを最重視したモデルでした。これに対して、今回のModel A005では、同じ焦点距離とF値ながら、まったくの性格の異なるレンズとなっています。同クラスの他社レンズに負けない高い光学性能と、超音波モーター「USD」(Ultrasonic SilentDrive)、手ぶれ補正機構「VC」(Vibration Compensation)を搭載したフルスペックのレンズを目指しました。次に、Model B008では、従来の機種(Model B003)は15倍と世界最大倍率を実現しましたが、レンズが大きく重くなってしまったので、これを18-250mmズーム(Model A18)並に小型軽量化を図りました。また、「高倍率ズームって便利なんだけど画質はこんなもんかな」といわれないように光学性能も向上させようという意気込みで、開発に取り組みました。

―なるほど。どちらも60周年記念モデルにふさわしい画質とズーム倍率をもつレンズに仕上がっているわけですね。そういえば、これまでタムロンはレンズのMTFを発表してきませんでしたが、A005からホームページでMTFを公開していますね。とくに、A005のMTFを見ると、絞り開放から非常に高コントラストで、しかも解像力も高いのに驚きました。実写してみると、非常にシャープな描写が得られました。それでいて、実売価格は5万円前後とリーズナブルですね。
佐藤 高性能なレンズを作っても、値段が高くなってしまっては、多くのお客様に買ってもらえません。それに、手ぶれ補正搭載の70-300mmズームは、すでに先行商品が発売されており、価格もこなれてきていますので、市場性から考えると、実売で5万円前後でなければ、いい製品を出してもなかなか数は売れないだろうという予測もありまして、設計当初から原価の設定を明確にして、設計や部材の調達、生産性などを徹底的に検討することで、画質性能に妥協することなく、この価格を実現できました。
―A005は、生産の立ち上げからを中国で行う最初のレンズだ、という話をどこかで見たんですが、それも低価格を実現できた要因のひとつですか?
佐藤 A005以前にも、最初から中国で生産してきたレンズはありますが、確かに国内で生産するよりも中国で生産する方がコストを抑えるのに有利ですね。
戸谷 加工や組み立てだけでなく、部品調達も現地で行うほうがコストを抑えられます。ただし、難易度の高い部分については国内で製造しています。

| 舘野登史邦氏 | 株式会社タムロン 基礎開発本部 基礎開発四部 部長 「手ぶれ補正レンズ側にコイルを搭載することで補正レンズを軽く小さくできました |
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| 渡辺祐子氏 | 株式会社タムロン 光学開発本部 光学開発一部 部長 「ひとつひとつの収差をバランスよく、根気よく補正してゴーストを低減しています」 |
| 佐藤浩司氏 | 株式会社タムロン 映像事業本部 商品企画部 部長 「同クラスの他社レンズに負けない高い光学性能を誇るレンズを目指しました」 |
| 戸谷 聰氏 | 株式会社タムロン 映像事業本部 設計技術一部 部長 「操作性について何度もシミュレーションを繰り返し、徹底的にカムの動きを追い込みました」 |